ナノカーボンを強化材にした
新次元のアルミニウム複合材料の開発。


今、金属の材料にはより高度な機能性を持たせることが求められています。それは高い導電性であったり、耐食性であったり、高温での安定性であったり、使う目的に応じて様々になります。ひとつの金属材料では機能的に弱い部分が多いので、その母材に強化材料を添加して多くの機能性を持たせた、これまでにない複合材料を作り出すことが私の研究のテーマになります。

まず取り組んだのは強化材にナノカーボンを使って、優れた機械的・電気的特性を持った新たな金属複合材料を開発することでした。これは今世界が注目して開発競争を繰り広げている分野でもあります。 ナノカーボンとはナノサイズ(10億分の1m)の構造を持つ新たなカーボン材料の総称で、軽量で極めて優れた強度や耐熱性、導電性を持っています。しかしこれまでナノカーボンを強化材に使った場合、母材の金属との結合力が弱く、界面組織の制御も難しいことが課題となっていました。

これまで、輸送機器などの電気系統部や送電線などには銅が主な素材として使われてきました。そして電気自動車やAIの成長などを背景に需要が大きく伸びている中で、銅資源のひっ迫が問題となってきました。 そこでそれに代わるものとしてアルミニウムを母材に、ナノカーボンを強化材にした複合材料が、軽量でしかも送電ロスも低減されるなど、理想的な特性を持つとして期待されてきました。しかし現状では実際に作り出した材料の機械・電気的特性が期待値よりも低く、その原因がわからない状態でした。 そこで私は、まず電子顕微鏡と微小機械試験機を使ったナノカーボン・アルミニウムの界面(接合面)強度の測定を世界に先駆けて行い、界面強度の低さが複合材料の強度の低い原因であることを実証させました。 そして複合材料間の荷重伝達を強化させるために、ナノカーボン(カーボンナノチューブを使用)の表面に、新たに開発した弱酸性処理技術を使って意図的にナノ欠陥を作り出すことと、それを制御する技術を確立させました。

さらに界面反応によってできるAl4C3を熱処理で制御することにより、界面結合を大幅に改善させ、強度、延性、導電率の高い特性バランスを作り出すことに成功しました。これはカーボンナノチューブだけでなく、強化材をグラフェン(シート状のナノカーボン)にした場合でも同様の結果を出すことができました。

これまでAl4C3はもろくて水との反応性も高いので、そもそも界面に生成させること自体が避けられてきたのですが、そのような常識を打ち破ったことで、高品質の炭素-金属界面を設計できるということを世に示しました。

(図/写真1)

2023年6月に(一社)粉体粉末冶金協会の研究進歩賞受賞式の懇親会にて、共同研究者と共に。左:野村直之教授、右:川崎亮名誉教授。

取材風景
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