人類にとっての新たな材料である「応力発光体」は、今後の社会応用への展開が大きく期待されます。研究室ではさらなる革新材料として巨大圧電と発光機能を同時に備えた「ハイパーマルチピエゾ体」の開発に取り組んでいます。「失敗を恐れずに挑戦すること。今を生きることが大事」と徐先生は話します。
「人類は古くから金属を利用してきたが、身近な材料であっても実際にはわからないことのほうが多い。だからこそやりがいがある」と話す及川先生。「うまくいったときには社会の役に立ったという実感」も感じるそう。「今は難しい時代ですが、若い人には好きなものを突き詰めてほしいです」とも話してくれました。
「決断に迷ったならば、勇気をもって自分の“直感”に従おう。直感を最適解に導くには、自身の選択として引き受け、努力を重ねることが大切」と髙村先生は語ります。研究もひらめきと挑戦と試行錯誤の所産である――豊かな経験に裏打ちされた研究者哲学は、若者への熱きメッセージでもあります。
優れた特性を持ちながらも、課題の克服が進まず、“万年”次世代材料という称号が与えられていたマグネシウム。仮説の裏付けで世界を驚かせ、続いて合金材料の探索を経て、世界初の特性を出現させた安藤先生。強く軽くてしなやかなMg合金は、生体内分解性を有し、医療分野での応用展開が期待されています。
カーボンニュートラルの実現に貢献する電気自動車や電動航空機のモータなどに不可欠な永久磁石。磁性材料の高性能化はすなわち社会全体のエネルギー効率向上、低炭素社会の実現、未来技術の進化・深化につながります。松浦先生が挑んだのは、潜在力を持ちながらも高特性化は困難とされてきた磁性材料です。
今、世界の多くの国・地域がカーボンニュートラルに向けた明確な数値目標や政策を打ち出しています。燃焼時にCO2を排出しない「水素」は次世代エネルギーの超有望株。再生可能エネルギー由来の電力から製造される“グリーン水素”、その中核技術である「水の電気分解」に轟先生の研究成果が大きな一石を投じました。
日本人の平均寿命は8年連続で更新(2020年7月厚生労働省発表)。その一方で支援や介護を必要としない「健康寿命」との差(8~12年)が大きな課題となっています。疾病治癒、身体機能の補修・代替にむけた技術ニーズとして高まる「生体材料」。山本先生は材料の新しい生体適応性=なじませ方を探究しています。
これからの地球環境保全の理念として「持続可能な開発」が掲げられています。限りある資源を有効に使っていく際に大きな障壁となるのが材料の腐食。逃れられない自然の摂理です。腐食の機構を探り知見を深める一方、防食技術の開発に取り組んでいるのが菅原先生。社会や産業とダイレクトにつながる研究です。
発電施設など過酷な環境にさらされる重要構造物の安全性や信頼性の評価は、そのまま社会の安全・安心につながっていきます。材料を探知するうえで課題となるのが、内部の見えないき裂です。小原先生はそれまで高精度な計測が困難とされた“閉じた”き裂を映像化(見える化)することに成功。世界初の研究成果です。
ゴムのように伸縮する特異な性質をもつ超弾性合金。現在、チタン-ニッケル系合金が広く使われていますが、コストや加工性の低さなどの課題もあります。銅系超弾性合金の研究・開発により、当該分野に一石を投じたのは大森先生の研究グループ。土木・建築部材への展開が期待される“大型単結晶”に注目です。
過酷な高温・酸化環境下で使用される耐熱材料。高温強度や耐酸化性など、性能や機能向上への要請はますます高まっています。竹田先生が挑むのは、これまでになかった革新的な超軽量・超耐熱材料の創成。このチャレンジングな研究をドライブさせるのは、実証実験の地道な積み重ねです。
誰も思いつかなかったアイデア、あるいは難しすぎると閉ざされていた道に挑戦し、研究のフロンティアを切り開いてきた東北大学マテリアル・開発系の伝統。田邉先生もまた新しい着想を基に、自作の実験装置を駆使し、実現可能性を引き寄せています。“その先に何かがある”--飽くなき探究心とともに。
失われた身体機能を代替し、回復させる生体材料。現在、整形外科の領域においては、人工関節の置換手術が一般的になっており、今後の超高齢社会においてその要請はますます高まるものと予想されています。上田先生が挑むのは、金属系生体材料の高機能化。人びとの健やかで快適な日々につながる研究です。
持続可能な社会構築に向けた重要なキーワード「環境」と「エネルギー」。これらの課題解決に大きな役割を果たすのが耐熱材料です。しかし、現在広く使用されている超合金は、今後さらに耐用温度を向上させていくことは困難であるとされ、新しい超耐熱合金の誕生が待ち望まれています。関戸先生はユニークかつチャレンジングな研究で、耐熱材料の可能性に一石を投じます。
革新的未来技術とされる量子コンピュータ。そのキーテクノロジーである「スピントロニクス」は、電子の「電荷」と「スピン」両方の自由度という、これまでのエレクトロニクスとは全く異なる新しい動作原理を利用するものです。立ちはだかる壁は、自由に動き回るスピンの制御。好田先生はこれまでにない新規的アプローチで挑んでいます。
今世紀後半には“実質ゼロ”に――「パリ協定」によって新しい段階に入った温室効果ガス削減。ますます期待が高まる再生可能エネルギー、中でも最近の注目株は「エネルギー・ハーベスティング」。その発電効率と耐久性を決定づける重要な役割を果たすのが「電子複合材料」。小さなエネルギーを支える大きな力です。
世界トップクラスの日本の製鉄技術。しかし近年、原材料の質の低下、環境負荷低減、国際競争力の激化など、鉄鋼業界には早期に対応・解決しなければならない課題が山積しています。“実験室から、巨大鉄鋼製造プロセスへ”、社会実装を前提とした研究開発に挑むのが三木先生。合言葉は「鉄は未来なり」。
現代の高度な情報通信技術を支える半導体と磁性材料。近年、これらを融合させたスピントロニクス(スピン+エレクトロニクス)分野に注目と期待が集まっています。その研究・開発のカギを握る半導体と親和性の高い「磁性材料」の探索と素子構成に取り組むのが手束先生。新しいデバイスの社会実装を視野に入れています。
紀元前3000年前の青銅器にも見出されるという「接合」の痕跡。まさに人類5000年の試行錯誤! 佐藤先生は、材料組織学的なアプローチによって、FSW接合部のミクロ組織に起きているいくつかの現象を解き明かしました。
同じ材料(粉末合金)であっても、レーザー積層造形法で加工成形したものは、鋳造材よりも強度や伸び、耐食性など優れた機械的性質を示すことが明らかに。さらなる特性と機能性向上に向けて、レーザー積層造形法にマッチした材料の開発が急務、と野村先生は語ります。
絶え間ない研究開発で、世界最高水準のエネルギー効率と最小環境負荷を達成してきた日本の鉄鋼業。時代と共に難しさを増す要請や目標に応えるべく、さらなる技術革新へ。担うのは次代を見つめる若き研究者です。
私たち人類の喫緊の課題である地球温暖化や環境・エネルギー問題。その解決に向けて一翼を担うとみられるのがジェットエンジン等のエネルギー変換効率の向上。鍵を握るのは、1500℃以上の過酷な環境に耐える材料の設計・開発です。
次世代型の「不揮発性メモリ」が待望され、世界各国の研究者たちがその研究開発にしのぎを削る中、相変化メモリ(PCRAM)の特長に着目し、新規材料開発に挑む須藤先生。視線の先には、社会・暮らしの近未来の姿があります。
専門は計量経済学。共同研究がきっかけとなり、“想像もしていなかった”という工学系の研究分野へ。近年、各所で盛んに推進されている文理融合、境界領域研究の可能性を追い求めています。
好きな言葉は『Ever onward(限りなき前進)』。そこが決して平坦な道ではないと知っていても、自らの意志で飛び込み、探究心を道案内に研鑽を積み、研究者としての確かな歩みを重ねてきました。これまでも、そしてこれからも。