マテリアル・開発系ではこのように考えます。
鉄鋼は安価に大量生産ができ、リサイクルも容易な環境負荷が少ない材料です。将来においても各種産業の基盤材料として、また社会資本や都市形成(鉄道、橋、建築物など)の整備・展開に不可欠で、鉄鋼を除外した低環境負荷社会の実現はあり得ません。しかし現在直面している資源・エネルギー・環境問題などの課題を克服し、新たな鉄鋼システムを構築していくには、現行の生産システムにおける付帯的な技術改良だけでは限界があります。そのため従来とは一線を画す根本的に新しい技術によるシステム変革が必要となります。その実現には様々な観点からの研究・検討が必要となり、産学官が連携協力して取り組むべき多くの重要な研究課題があります。
しかし、この10数年来我が国の大学における鉄鋼研究は衰退傾向が著しく、各大学の工学部・工学研究科から鉄鋼の教育と研究に関わる講座や分野が激減してきています。一方、鉄鋼業においては、不況期におけるリストラで研究人員が削減されたため、大学での鉄鋼の基礎研究推進への期待は大きいと考えられます。
東北大学マテリアル・開発系では、今後の日本のさらなる産業発展、それにもとづく安定した社会発展には、新たな視点からの鉄鋼研究と教育が絶対に必要であり、継続的かつ積極的に推進・展開していく必要があると考えています。このためマテリアル・開発系では材料の教育・研究に関わる多数の教員、総合的な研究ポテンシャル及び充実した研究施設・実験設備を活用し、鉄鋼企業等からの基金提供に基づいて、鉄鋼に関わる先進的な新プロセス、新材料及びその利用技術の研究、鉄鋼に従事する人材の育成をおこなう「先進鉄鋼研究・教育センター」(ARECS)を設立しました。